№13 その理由で株を買うのはダメです!
株で失敗する買い方
番組はここからストリーミングで聴くことができます ▽▽▽
今回は、エーザイ「その理由で株を買うのはダメです!」というテーマです。
株を買う理由は人それぞれ、色々あると思います。
たくさんある会社の中から、なぜその会社を選ぶのか?
やはり自分の大切なお金を出すわけですから、なにか理由があると思います。
アルツハイマー治療薬の開発に成功!
株を買う理由が、会社を応援するという側面だけではなく、「収益を目指す」という側面から見た時にどうなのか?
これを検証してみたいと思います。
「エーザイ」と言う製薬会社があります。
最近ニュースで大きく話題になりました。
「アルツハイマーの治療薬の開発に成功した!」
この治療薬がアメリカで承認されたというニュースです。
アルツハイマー病は、世界中で多くに人が発症し、その治療薬はいままでありませんでした。
だから、このニュースは非常に画期的で明るい話題でした。
当然、誰もがエーザイと言う製薬会社は、社会的な貢献度だけでなく、業績と言う面から見ても、今後株価の上昇が期待できると考えますよね。
では、このニュースを見て、もしエーザイの株を買ったらどうなったのか?
具体的に株価という数字で確認してみましょう。
面白い現象が見えてきます。
業績やニュースで株を買う…
株をやっている人に、「あなたが株を買うとしたらどういう理由で会社を選びますか?」と質問すると、だいたい2つの答えが返ってきます。
一つは「株主優待」。
れが全体の2割くらい。
残りの大半の方は「業績」と答えます。
業績の良い会社を選びますと。
あるいは「サプライズ的に良いニュースが発表された会社を狙います」と答えます。
この「業績が良い会社」と、「良いニュースや情報が発表された会社」、これが圧倒的に多いです。
理由として「会社を応援する」気持ちがどこかにあって投資をするので、本来の投資の考え方に近いのでOKです。
ところが「収益を目指す」と言う側面から見た場合、実はNGなんです。
世界的に好感されるニュースが発表された
エーザイという会社の株価で検証してみたいと思います。
今年6月に大きなニュースが新聞やテレビで話題になりました。
米食品医薬品局(FDA)が、6月7日にエーザイと米の製薬会社が共同開発した、アルツハイマー型認知症治療薬候補の「アデュカヌマブ」について承認申請を認めると発表した。
今コロナワクチンを開発した、ファイザーやモデルナみたいな感じだと思ってください。
アルツハイマー病は、日本でも世界でも多く人が発症しています。
ガンの治療薬は開発されていますが、アルツハイマー病に対してはまだ治療薬がなく、人類の大きな課題になっていました。
若年性・・・とかもあって、自分がなるかもしれないと一抹の不安はありませんか?
この治療薬の開発に成功して、承認までされたという話題ですから非常に大きなニュースです。
認知機能の低下を長期的に抑制する機能を持つ薬として世界で初めての承認です。
当然株価は65%も高騰!!!
さぁ、この世界的なポジティブなニュースを受けて株価はどう反応したのか?
検証してみましょう。
このニュースが新聞やテレビで報道されたのが6月7日の夜でした。
私たちが初めて知ることになったのは、6月7日の夜です。
この日の株価は7,751円。
端数ややこしいので100円以下は丸めて7,700円とします。
ここから株価ではなくて、リアル感があるように一口の金額で書いていきます。
この7,700円、つまり77万円の株価が、発表を受けて翌日いくらになったかと言うと、翌日はあまりにも買いが殺到しすぎて売買が成立しませんでした。
ご存じのように、株価は需要と供給の関係で決まります。
売る人と買う人があって初めて値段が付くのですが、あまりにも需要、つまり買いが多いと値が付きません。
これを株式用語ではストップ高と表現します。
この日は制限いっぱいいっぱいまで上昇して、20%上昇の92万円になりました。
翌日も同じくストップ高で売買が成立せず、16%の上昇で108万円になりました。
実に2日間も売買が成立しないで、3日後に初めてついた値段が108万円。
77万円が僅か3日間で108万円にまで値上がりしたことから、人気のほどが伺えます。
30万円上昇して、上昇率は40%、ニュースを受けて1.4倍になったわけです。
これは、アルツハイマー治療薬の開発成功のニュースで、みんなが期待を込めて欲しいと思って買った結果です。
その後も上げ下げしながら、2週間後には127万円まで上昇しました。
発表前と比較すると、50万円、65%も跳ね上がったことになります。
どういうことやねん!
さぁ、発表から2週間後にどうなったか?
127万円をピークにして、1か月半後には90万円まで値下がりしてしまいました。
実に、37万円、30%の値下がり。
50万円値上がりしたと思ったら、今度は37万円も値下がりしたことになります。
目まぐるしい動きで、まるでジェットコースターに乗っているようです。
この動きを踏まえて、もしあなたがニュースを見た後に欲しいと思って、すぐに買う注文を出したとしましょう。
最初の2日間は欲しい人が殺到しすぎて買うことができませんでした。
「買えないなぁ~・・・」
そしてようやく買えたのは3日目で、その価格は108万円です。
そこからさらに上がって喜んだのは僅か2週間だけです。
そのまま持っていたら90万円まで下がったので、18万円も損をする結果になりました。
108万円で手にして127万円まで増えたけど、90万円になってしまって、結果18万円も損をしてしまったという結果です。
「期待して買ったのにどういうこと???????」
それまでに売らなかったのか?
では、損をする前に「高い値段の時に売っておいたら良かったじゃぁないか?」ということなんですが、そうは上手くいきません。
なぜならば、127万円になっていたとしても、それが株価のピーク、天井だとはその時には分からないからです。
後になって振り返った時に、「あぁ~あれが天井だったんだな」と初めて分かります。
人間は欲があるから、もっともっとと思ってしまいます。
今売れば利益があると分かっていても、「もし自分が売った後でまだ値上がりしたら儲けそこなう」と考えてしまうので、絶対に手放せません。
そういう心理を持った生き物が人間なんです。
どんどんと欲が湧いてきて、もっともっとって思ってしまう。
だから、ニュースの3日後に買った108万円が127万円に増えても、そのまま売らずに持ったままにしてしまう。
結果、90万円まで下がって、みすみす18万円も損をしてしまう。
ニュースのインパクトが大きいので、それでもまだ上がると信じていると思います。
買値を割り込めば逃げることなど考えもしないでしょう。
この時に最悪なのは、1口の100株じゃぁなく、300株も500株も買ってしまうことです。
そういう人は欲で見えなくなっていますので、売って利益を確保しようなんて思いません。
だから、下がっていった場合、沢山の株数を持っていたら、持っているほど損失は大きくなる。
もし500株なら90万円の損ですから、かなりの痛手ですよね。
火に油を注ぐ証券会社
このように、いくらポジティブなニュースといえども、追いかけると大変なことになるということです。
そいう事例がこのエーザイという会社の株です。
実はこれに更に輪をかるように火に油を注ぐ様な情報が出ました。
某大手の証券会社N証券が、ポジティブニュースの発表の翌日にこういうコメントを出しました。
「エーザイの目標株価は180万円」
正式に投資予測として発表しました。
大手の証券会社がそう言ったら、そこまで上がると一般の投資家は信じ込みます。
エーザイの株が欲しい人が、このニュースを見たらどう思うでしょうか?
「買えば180万円になるんだ!」
そう信じ込んで、180万円という金額が頭の中に渦をまきます。
そしたら、実際のピークになった127万円なんかでは、売ろうなんて考えません。
むしろ、127万円でもまだ安いから買おうと思うはずです。
現に、その価格で売買が成立したということは、その価格で買った人がいたと言うことです。
こうやって、個人投資家はニュースや情報に振り回されて、ジェットコースターのように上下する株価の動きに巻き込まれてしまいます。
大体の場合、ほぼ間違いなくそうなって損をします。
さぁ、話はこれでまだ終わりません!
さらにひどい仕打ちが…
このアルツハイマー治療薬の話は、治療薬が承認されたというだけで、まだ具体的ななんら業績に結びついていません。
ましてや、アメリカで承認されただけで、日本ではまだ承認されたわけはなく国内で処方することはできません。
だからまだ現実のものにはなっていなくて、言わば「噂」に近いレベルなんです。
そのような状況の中、今度はこんなニュースが世界を駆け巡りました。
「米国の大手病院が相次いでこの治療薬を使用しない方針である」と。
大手病院の間では安全性や効果に対する慎重な見方が出ているということだそうです。
米の株式市場では共同開発した会社の株が大幅安となり、日本のエーザイにも売りが波及しました。
そうなると、今まで推していた証券会社もエーザイへの評価を変えました。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が投資判断を3段階のうち最下位に引き下げました。
見事なまでの手のひら返しです。
アナリストは、認知症治療薬をめぐって検査の負担や副作用などへの懸念から、「商業的成功へのハードルは依然高いとみる」と指摘しました。
認知症治療薬の売り上げを業績見通しに織り込んでも、「現在の株価には過熱感がある」との見方を示した。
投資家からすると、いきなり梯子が外された状況になりました。
こんなニュースが流れたら株価はどうなると思いますか?
翌日には一転して1日で20万円も下落する結果となりました。
まさにニュースに翻弄される事態です。
他者思考だからです
話を一番最初に戻しますと、株を買う時に業績やニュース、情報を理由に買ってしまうとこんな混乱に巻き込まれて翻弄されてしまいます。
「その理由で株を買うのはダメです!」、という理由は業績やニュースのことです。
これはエーザイに限ったことではなく、ほぼ全ての会社の株に共通した動きです。
相当危険な買い方、やり方と言えます。
だから株で損をするんですね
知らないから仕方がないだけで済まされませんね、資金を失くしたのでは。
このやり方では主人公は自分ではありません。
情報やニュース、他人の意見の左右されてやるから負けるんです。
自分でできる力をつけなければなりません。
チャートをみて自分で判断する
じゃぁ、これを回避する、こんな事態に巻き込まれないようにしようと思えばどうしたら良いのか?
まずいつ買うのが正解なかというところからスタートします。
それは、いつもお話してるように「株価チャート」を使って、株価が「線」よりも高くなったタイミングで買うと言うことです。
エーザイの場合も、そのタイミングがありました。あえてエーザイを買うならばですが。
振り返ってチャートで買っていたとしたら、その値段は74万円です。
ニュースが出たのは77万円の時。
チャートを使っていたら、ニュースが出るよりも早く安く買えていたことになります。
チャートはニュースを先取りして、本来のタイミングを教えてくれます。
じゃぁ、いつ売れば良かったかと言うと、これもチャートで簡単にクリアすることができます。
基本的にはどこまで上がるかは分かりませんから、ピーク・天井で売り抜けるのは不可能です。
今出ている利益のうちで、最悪下がってきたとしても、「自分が確保したい金額はいくらなのか?」を、あらかじめ決めておきます。
例えば、100万円利益が出てたら、「最悪下がっても80万円は欲しい」と考えたならば、決めた金額まで株価が下がったら売ってその利益を確定します。
これしか手段はありません。
株で利益が出ている場合、これしかありません。
考え方の視点が逆なんです。
「上がったら売ろう」ではなくて、上がってる株価が下がってきたら、つまり「失速してきたら売って今の利益を確保しよう」という考え方です。
上がったらと考えると、目標がありませんからいつまでたっても売れません。
「下がった時にまた上がるだろう」とか、売った後に「上がったら儲けそこなう」と思うので絶対に売れません。
だから、下がった時に自分が欲しい額を確保すると決めておけば良いのです。
このように考え方の目線を変えれば、利益は確保できます。
間違っても損は避けられます。
エーザイの場合、シミュレーションとしては、74万円で買って115万円くらいで利益確定です。
つまりチャートを使えば40万円ほどの利益がちゃんと出ると言うことです。
もし、ニュースを頼りに108万でなどという、とんでもない高額で買うこともなくなります。
仮に買ってしまったとしても、チャートを見て利益確定をしていれば、少なくとも7万円くらいの利益はなんとか確保できるので、損をしないで済んでいたことになります。
100歩譲っても、トントンで逃げることができたはずです。
その後の追跡してみたら
9月10日、急落しました。
こんなニュースが前日に出ました。
株価はニュースに翻弄されて、もうむちゃくちゃですね・・・
自分の判断で売買ができる力をつけることが必要です。
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